Houzzツアー:シンプルな暮らしを楽しむ海辺の家
ボロボロに傷んでいたファームハウスを、シンプルで美しくて、しかも快適な海辺の家にリノベーションした事例です。
「ラグジュアリー」と聞いて、重厚なカーペット、きらめくクリスタルのシャンデリア、シルクのクッションといった華やかなインテリアをイメージする人もいるだろう。一方で、究極のラグジュアリーとは、余計なものをそぎ落としてシンプルを極めてこそ味わえるもの、と考える人もいるだろう。スウェーデン南部、エステルレーン地方にあるこの家は、まさに後者の例だ。このファームハウスは長い間放置されており、現在のオーナーが出会ったときにはかなり傷んでいた。それでも夏を楽しむには最高の、海辺のロケーションはかけがえのないもの。そこで、コペンハーゲンの建築事務所〈LASC スタジオ〉の2人、ヨナス・ラベさん、ヨハンネス・ ショタヌスさんにリノベーションを依頼した。
オーナーは2人の子どもがいるスウェーデン人夫妻で、予算には限りがあった。そこでラベさんとショタヌスさんは、シンプルな素材を厳選し、内部をワンルームの空間に改装し、トラディショナルな要素とコンテンポラリーな要素を融合させた家に再生するというプランを立てた。できあがったのは、すっきりとミニマルで、シンプルを極めたラグジュアリーな空間だ。
下の写真は家具を入れる前の状態。家のつくりがよくわかる。
オーナーは2人の子どもがいるスウェーデン人夫妻で、予算には限りがあった。そこでラベさんとショタヌスさんは、シンプルな素材を厳選し、内部をワンルームの空間に改装し、トラディショナルな要素とコンテンポラリーな要素を融合させた家に再生するというプランを立てた。できあがったのは、すっきりとミニマルで、シンプルを極めたラグジュアリーな空間だ。
下の写真は家具を入れる前の状態。家のつくりがよくわかる。
エステルレーン地方は広くさえぎるものがなく風の強い土地。住む人を風から守るため、伝統的な住宅は頑丈なつくりの中庭住宅になっている。オーナー夫妻もこの地方の伝統的スタイルは知っていたが、同時に外の空気を感じられる住まいにしたいという希望ももっていた。
ラベさんとショタヌスさんは、窓と床はそのまま使う一方、室内の壁は3分の2近くを撤去して広い空間をつくり、高さを感じられる設計とした。大型の窓などの開口部を新たに設け、窓枠は漆喰の壁になじむつくりにして、屋外と家がシームレスに続くよう工夫している。
1960年代のデンマーク製のストーブは、手を加えて取り入れた。美しい存在感が、ラスティックにしてこの家にふさわしい雰囲気をつくりだしている。
1960年代のデンマーク製のストーブは、手を加えて取り入れた。美しい存在感が、ラスティックにしてこの家にふさわしい雰囲気をつくりだしている。
素材の種類は絞り込んでいる。パイン材の厚板、コンクリート、白い漆喰のほかはほとんど使用していない。「住まいとは人の暮らしを守るものという考え方をとらえなおす試みとして、このプロジェクトに取り組みました」とラベさんは話す。
鮮やかなブルーとオレンジが家のところどころにつかわれているが、色づかいは基本的にシンプルで飾りたてるところがなく、外の風景とつながっている。淡いトーンが自然とのつながりを感じさせる一方、ブルーとオレンジのアクセントはどこかほっとする、ノスタルジックな要素を加えている。以前中国で暮らしていたオーナー夫妻にとっては、かの地の海を思わせるイメージだ。
ブルーとオレンジを取り入れたのは、廊下など、空間と空間をつなぐ部分が多い。家の中を歩いていると色が現れては消えていく。
リノベーションに取り掛かる当初から、ラベさんとショタヌスさんは「物質的豊かさではないラグジュアリー」を感じさせる家をめざす、とコンセプトを決めていた。シンプルなパイン材の厚板からなる壁と床に囲まれた中に、鮮やかなブルーの階段が浮かび上がる。
「非常に飾りのない、つつしみのある家です。ラグジュアリーというのは経験とシンプルさに尽きる、という点に立ち返るような住まいですね」とラベさんは言う。
「非常に飾りのない、つつしみのある家です。ラグジュアリーというのは経験とシンプルさに尽きる、という点に立ち返るような住まいですね」とラベさんは言う。
2階へ上がると隠れた扉があり、開けると光あふれる小さなベッドルームが現れる。遊び心とサプライズのあるしかけだ。パイン材の扉は板を張った壁に溶け込んでいて、開くと明るいオレンジ色がふいに目に飛び込んでくる。「こうした発想を楽しんでやっています。なじみがあって、でも驚きもある、そんな工夫と表現を追求しています」とショタヌスさん。
ベッドルームへ続く扉を開けると、階下のリビングエリアが見え、ロフトにいるような気分に。設計を手がけた2人が目指したのは、家全体をできるだけオープンな空間にすることだった。そのために、元からあった壁を一部撤去したほか、残した壁に窓やドアを新たに設けることで、家を生まれ変わらせている。
モダンなスウェーデンスタイルにならい、しつらえやデコレーションはあくまでシンプルで控えめにとどめている。それでも、ぬくもりのあるラスティックなパイン材のパネリングに自然光が降り注ぎ、ぬくもりを感じる空間に。
オーナー夫妻も設計した2人も気に入っているのが、母屋とつながる、元は洗濯小屋だった別棟。こちらも母屋と同じく、外装は伝統的なスタイル、中はモダンで遊び心あるアイデアを取り入れた設計だ。
別棟にはバスルームを設置。母屋と同じく、エステルレーンの自然の美しさが感じられる空間にしたかった、とラベさんとショタヌスさん。シャワールームはフロアを木製にした。木の床に落ちるシャワーの水音が、外の自然を思わせる。
バスタブはシャワーとは反対側にあり、光が入る窓の前に設置。窓下のコンクリート製ベンチはヒーターで暖められる。シンプルなデザインが窓から見える景色を引き立て、家の内と外を自然につないでいる。